Integration for Micro Systems
顕微鏡画像システムをユーザー様のご要望どおりに開発するには何が必要なのでしょうか。私が経験した実績を踏まえてシステムメーカーの立場として挙げるとすれば以下のようになると思います。また重要なこととして、これらが明確に実施されない場合、「使えない機材」を購入してしまう結果になりかねません。
自動システムを設計するにあたって最も大切なことの一つは、ニーズの正確な把握です。 検査条件(目的物体、観察視野範囲、検査項目、その他)やその他の制限(タクトタイム、判定不定率上限値、その他)などについて数値を示して要求することが必要です。また現行の目視検査方法も開示が許される限り要求します。多くの場合、自動検査基準はそれまでの目視検査基準に準拠します。
ニーズを把握した後は、それが実現できるのかどうかの理論的検証を実施します。 あらゆる条件を次元解析し、ニーズに合致するかを検討します。また、実試料を借りて実証テストも実施します。この結果ニーズに対して実現できることとできないこと、制限などをまとめて提案書を作成します。
作成した提案書を基にして、ユーザー様と仕様打ち合わせを実施します。 ここでは提案内容がニーズに合致しているのか、合致していなければ妥協できる仕様はどのようなものかなどを検討します。多くの場合、この提案で当初のニー ズが満たされることが判明すれば、ユーザー様から更なる仕様アップが要求されます。よって再度のサンプルテストが必要なこともあります。 仕様が決定されれば「確定仕様書」を取り交わし、金額の提示をします。
仕様によって変化しますがシステム製作には数ヶ月(2〜4)を要します。機材の調達、ソフト製作およびデバッギング、社内での試運転調整などのためです。 システム納入では機材の据え付け、数日間の試運転調整後に、「確定仕様書」に基づいた検収条件をクリアしているかどうかを、ユーザー様およびメーカー立会いの上、検証します。 一般的なサポート条件は1年間の通常の保証です。つまりメーカー側に責任があった不具合などについて1年間は無償で修理、取り替えを実施します。 サポートについて条件(24時間以内の正常動作復帰など)を要求される時には、別途保守点検契約などを交わします。
各種製造業界において80年代に生産設備の自動化がほぼ終了し、90年代にはそれまで人為操作に頼っていた検査すなわち目視検査の自動化が始まりました。 90年代後半にはマクロ的検査視野での目視検査自動化が普及しましたが、ミクロ的視野すなわち顕微鏡的視野での検査目的には2000年代に入った現在においても未だに目視検査が圧倒的に主流です。 例えば食品の迅速微生物検査において、現状の技術では工程に数十時間以上(PCR法など)かかるのが実情です。 また、検査すべき試料の数量が膨大な場合にも、多くの場合その信頼性が低いために、他の検査手法との組み合わせにて判定しなければならず、目視検査の限界が既に見えてきています。 つまり、顕微鏡的観察視野での自動検査装置のニーズが高まってきています。
創業者が設計製作した装置 微生物分野に限れば、次のような装置を設計製作納入(各項目複数セット)しています。
( 蛍光、位相差、蛍光位相差自動切換え)(神経生理学分野研究者様向け)
(明視野、蛍光)(多数の多分野ユーザー様向け)
(水道事業地方自治体様向け)
(多数の研究者様向け)
(明視野、蛍光)(遺伝子研究者様向け)
(神経生理学研究者様向け)
(製薬業様向け)
大手各社とも大規模市場が見込める画像システムの開発を日々行っていますが、個別のユーザー様ニーズに応えるシステム設計は比較的小さな企業が実施しています。また最先端の研究や急を要するニーズに対して対応は大手企業では困難と言えます。 特にシステムメーカーではない顕微鏡メーカーでは、既製品の販売に力を入れてしまいます。 よってユーザー様ニーズを聞くことよりも自社製品の宣伝に傾倒しがちであり、ユーザー様が発するキーワードに反応して機材を提案します。例えば「蛍光」の言葉に対しては「蛍光顕微鏡+高感度カメラ」、「自動」という言葉に対しては「電動顕微鏡+撮像装置」、そして「高解像度」に対しては「デジカメ」というようにです。単品で実現しそうに無いとメーカー側が考えれば、「機材の寄せ集め」にて対応しようとします。ここには「ニーズの正確な把握」という行為が抜け落ちており、またユーザー様もそれを認識できない危険性があります。ニーズに即さない「使えない機材」「役にたっていないシステム」が納入される原因の一つがここにあります。この結果を招いた場合、ユーザー様、メーカーとも不幸になります。 システム設計過程では、単に構成機材の性能を確認するだけではなく、それらが有機的に動作する際の性能をも確認します。
今後も顕微鏡画像システムによる目視検査の自動化ニーズが多くなるだけでなく、多様化する傾向が見受けられます。90年代にマクロ的視野観察での自動化システムが小規模企業によってなされていたように、小回りがきくこれらの業者がミクロ的視野観察ニーズにおいても今後は増えてその後淘汰されると考えられます。 更にできる限り多くのユーザー様に対して喜ばれるシステムを作っていくためには、後継者の育成もメーカー側の大きな責任ではないかと考えます。